ついカッとなって、後で後悔した経験はありませんか?
仕事で、家庭で、人間関係で…怒りの感情に振り回されてしまうことは、誰にでもあることです。
私自身、かつては怒りをコントロールできず、周囲との関係を悪化させてしまった苦い経験があります。
しかし、アドラー心理学に出会い、実践することで、怒りに振り回されない自分を手に入れることができました。
この記事では、アドラー心理学の教えを基に、ちゃんこ先生と生徒たちの対話を通して、怒りをコントロールし、より良い人間関係を築くための具体的な方法を学んでいきます。
アドラー心理学における「怒り」のメカニズム
レイコ:ちゃんこ先生、私は最近、子どもに対してイライラして、つい怒鳴ってしまうことが多くて悩んでいます。どうしてこんなに怒りっぽくなってしまったのでしょうか?
ちゃんこ先生:レイコさん、お悩みを打ち明けてくださりありがとうございます。
アドラー心理学では、怒りは「目的」を達成するための手段だと考えるのですよ。
レイコ:目的、ですか?
ちゃんこ先生:ええ。例えば、レイコさんがお子さんを怒鳴ってしまうのは、
「子どもに言うことを聞かせたい」「自分の思い通りに動いてほしい」という目的があるからかもしれません。
タイキ:でも、怒っても逆効果になることもありますよね?
僕はアルバイト先で、店長によく怒られるのですが、正直やる気がなくなってしまいます。
ちゃんこ先生:怒りは、相手をコントロールしようとする「力の行使」とも言えます。
しかし、それでは真の解決にはならず、人間関係を悪化させてしまうこともあるのです。
野沢:私は、仕事で部下に注意する時、ついつい強い口調になってしまいます。
自分の未熟さを痛感する一方で、どうすれば良いかわからず困っています。
ちゃんこ先生:野沢さん、多くの方が同じような悩みを抱えています。
アドラー心理学では、怒りの背景には「劣等感」が隠れていると考えることがあります。
自分の思い通りにならない状況に対する、無力感や焦りが怒りとして表れるのです。
そして、その劣等感は、自分の「主観的な思い込み」である場合が多いのです。
怒りを「力」に変えるアンガーマネジメント
ちゃんこ先生:では、怒りを建設的な「力」に変えるための具体的な方法について考えていきましょう。
アドラー心理学をベースとしたアンガーマネジメントには、次のステップが重要です。
ステップ1:怒りの「目的」を自覚する(目的論)
ちゃんこ先生:まず、自分が何のために怒りを使っているのか、その「目的」を自覚することです。
怒りを感じたら、「自分は何を達成したくて怒っているのだろう?」と自問自答してみましょう。
タイキ:自分の怒りの「目的」を考えることで、冷静になれそうですね。
でも、具体的にどう考えれば良いのでしょうか?
ちゃんこ先生:例えば、タイキさんがバイト先で店長に怒られた時、
「自分は仕事を早く覚えて、店長に認められたい」という目的があるかもしれません。
その目的を意識すれば、「怒られたことを改善しよう」と前向きに捉えられるかもしれません。
野沢:なるほど。私は部下を指導する際、「チームの目標を達成したい」という目的があるはずです。
その目的を忘れずにいれば、感情的にならずに済むかもしれません。
ステップ2:怒りの裏にある「一次感情」を見つける
ちゃんこ先生:怒りは「二次感情」と呼ばれ、その裏には「一次感情」が隠れています。
一次感情とは、不安、悲しみ、寂しさ、悔しさといった、私たちが最初に感じる素直な感情のことです。
レイコ:一次感情、ですか?どうやって見つければいいのでしょうか?
ちゃんこ先生:例えば、子どもが言うことを聞かずに怒ってしまった時、「子どもがケガをしたらどうしよう」という「不安」や、「自分の子育てが間違っているのではないか」という「焦り」が隠れているかもしれません。
「私は今、不安なんだ」「焦っているんだ」と、一次感情を認めることが大切です。
ステップ3:「認知のゆがみ」に気づく
ちゃんこ先生:私達は、自分に都合の良いように物事を解釈してしまうことがあり、これを「認知のゆがみ」といいます。
この「認知のゆがみ」が怒りを増幅させている場合が多いです。
タイキ:認知のゆがみ、ですか? 例えば、どんな感じですか?
ちゃんこ先生:例えば、「べき思考」というものがあります。
「部下は上司の指示に必ず従うべきだ」「学生は毎日必ず復習すべきだ」といった考えです。
「絶対〜すべきだ」が口癖になっている人は、この認知のゆがみがあるかもしれません。
野沢:確かに私は「べき思考」が強いかもしれません。
「部下が一度で理解すべき」と決めつけているから、イライラしてしまうのかも…
ステップ4:アサーティブなコミュニケーションを心がける
ちゃんこ先生:自分の意見や感情を、相手を尊重しながら率直に伝えるコミュニケーション方法を「アサーティブ・コミュニケーション」と言います。
怒りを適切に表現し、建設的な関係を築くために効果的です。
レイコ:アサーティブ・コミュニケーション、ですか。
具体的にはどうすれば良いのでしょうか?
ちゃんこ先生:例えば、「私は〜と感じる」という「Iメッセージ」を使うと良いでしょう。
「あなたはいつも遅刻して、だらしない!」と責めるのではなく、
「私はあなたが遅刻すると、心配になるし、悲しい」と伝えるのです。
他者との健全な関係を築くために
ちゃんこ先生:怒りをコントロールし、他者と健全な関係を築くためには、アドラー心理学の「共同体感覚」と「課題の分離」という考え方も重要です。
共同体感覚を育む
ちゃんこ先生:共同体感覚とは、自分が社会の一員であり、他者とつながっているという感覚です。
周りの人を「仲間」だと考え、貢献しようとする気持ちを持つことで、孤立感や不安が和らぎ、怒りもコントロールしやすくなります。
タイキ:仲間、ですか。アルバイト先では、つい競争意識が強くなってしまうのですが、それも良くないのでしょうか?
ちゃんこ先生:競争が悪いわけではありませんが、過度な競争意識は、自分も他人も苦しめてしまいます。
アルバイト仲間も「チームの一員」と考え、「一緒に良いお店を作ろう」という意識を持つことが大切です。
課題の分離を意識する
レイコ:課題の分離、とはどういうことでしょうか?
ちゃんこ先生:「これは誰の課題か?」を考え、自分の課題と他者の課題を切り分けることです。
例えば、子どもが勉強するかどうかは、子どもの課題です。
親は、勉強しやすい環境を整えることはできますが、勉強そのものを強制することはできません。
レイコ:なるほど。私はつい、子どもの課題にまで踏み込んで、イライラしていたかもしれません。
ちゃんこ先生:そうですね。課題の分離を意識することで、過干渉や、不必要な怒りを減らすことができますよ。
よくある質問
- Q怒りを全く感じないようにすることはできますか?
- A
怒りは人間にとって自然な感情です。
無理に抑え込むのではなく、なぜ怒りを感じたのか、その「目的」を理解することが重要です。
そして、その目的に対して、怒り以外の方法でアプローチできないかを考えましょう。
- Q怒りっぽい性格は変えられますか?
- A
はい、変えられます。アドラー心理学では、性格は「ライフスタイル」と呼ばれ、自分で選択・変更できると考えます。
アンガーマネジメントを実践することで、怒りをコントロールし、より良い人間関係を築くことができるようになります。
- Q子どもが言うことを聞かない時、どうしても怒ってしまいます。どうすれば良いですか?
- A
子どもには、大人のように論理的に話しても伝わりにくいことがあります。
「課題の分離」を意識し、子ども自身の課題として、自分で考え、行動できるようにサポートしましょう。
また、「共同体感覚」を育むために、子どもを一人の人間として尊重し、対等な関係を築くことが大切です。
まとめ
アドラー心理学に基づくアンガーマネジメントは、怒りをコントロールし、より良い人間関係を築くための具体的な方法を教えてくれます。
怒りの「目的」を理解し、「一次感情」に気づき、「共同体感覚」を育み、「課題の分離」を意識することで、私たちは怒りに振り回されない人生を歩むことができるのです。
イライラは、あなたを変えるチャンスです。
アドラー心理学の教えを実践し、怒りを力に変え、より豊かな人間関係と、充実した毎日を手に入れましょう!
参考文献
- すぐに怒る上司は、部下を支配したがっている | アルフレッド・アドラー100の言葉
- アドラー心理学とは – 野田俊作顕彰財団
- そもそも感情とは何か? ~「感情労働」とこれからの人事労務管理(5) – HRプロ
- マインドフルネス:今ここを生きる【アドラー心理学とは何か
臨床心理学と自己啓発を整理する
#9】 - AI書評:「心地よさを求めて: アドラー心理学からみる感情論」(川島書店)
- 「部下が本音を隠す上司」と「部下が本音を明かす上司」の決定的な違いとは? | すごい傾聴
- 共同体感覚:他者貢献と感謝の循環【アドラー心理学とは何か
臨床心理学と自己啓発を整理する
#7】 - 怒りや劣等感と、どう向き合う? ネガティブな感情をコントロールする方法とは? – PHP人材開発
- 怒りの原因とコントロール方法を解説-アンガーマネジメントの進め方
- 「怒り」に振り回されるのはもうやめよう。アンガーログをつけるだけで負の感情から解放される
- アドラー心理学に学ぶ!子どもの反抗・非行の解決法 – オールアバウト
- 人生が変わるアドラー心理学 全編
- 創造発見学第三回:「アドラー心理学と創造性」(8)アドラー心理学の技法(勇気づけ)とはなにか
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